「老化は病気である」と主張する学者が増えている。
老化はがんなどと同じように「病気」だから、その原因を取り除けば治せる、という主張である。WHO(世界保健機関)でも2022年に公表した国際疾病分類で、
老化を病気の1つと定義する予定だったが、
意見の一致が得られず、次回へ持ち越しとなった。
細胞は分裂を一定回数繰り返すと分裂しなくなり、自然死していく。
だが「細胞が老化」することが「身体の老化」ではない。
人間は、身体全体が老化しないようにできていて、老化した細胞を排除する修復力がある。
つまり「老化」とは、この修復機能が低下している状態のことをいう。
逆に言うと、修復機能を維持できれば、私たちの身体はいつまでも新生を繰り返し、理論上は老化しないということになる。
老化による病気には、関節など運動器の障害で移動が困難になったり、
筋肉が衰えるほか、老年症候群、ガン、血液疾患、関節リウマチ、認知症、骨粗鬆症などがある。
先進国に限ると、我々の90%は加齢関連疾患で死んでいる。
つまり人類最大の敵は老化による死で、老化を治療すれば健康寿命を延ばせるというわけだ。
世界的ベストセラーとなった「老いなき世界」(東洋経済新報社)の著書ハーバード大学のデビッド・シンクレア教授(遺伝学)は
「生物の老化について明らかになった重大な結論は、
老化は避けて通れないものなのではなく幅広い病理学的帰結を伴う疾患のプロセスである」と説明している。
教授はタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたことがあり、
老化研究の世界的な第一人者。
「そもそも寿命の上限があるとは思わない。人生250年という世界が、20年ぐらい先には実現する」と主張する。
「老化は病気」に異議を唱える学者もいる。
今井眞一郎ワシントン大学教授は「病気は治療すれば、元にあった状態にもどすことができる。
だが老化は遅れさせることはできるが、元に戻すことはできない。
老化は病気として治療する対象ではなく予防するものだ」と指摘する。
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