テロメア 寿命 男性の女性化
遺伝子の周辺の働きはまだ十分にはわかっていません。
「遺伝子の周辺」:
「遺伝子のまわりで、遺伝子のスイッチのオンオフを調節するもの」と思ってもらえればいいでしょう。
この周辺部分のことを「エピジェネティクス」といい、
これが遺伝子と同じように、いや、それ以上に大事なのです。
「後天的な努力で遺伝子の影響は変えられる」
これはまさにエピジェネティクスのなせる技。
遺伝子は変えられなくても、遺伝子のスイッチのオンオフは変えられます。
遺伝子のスイッチのオンオフが変われば、老化を遅らせたり、
若返らせたりすることができる。
この遺伝子のスイッチのオンオフは後天的な努力で変えられます。
たとえば、人間の寿命は遺伝子で規定されています。
私たちの体を構成する一つひとつの細胞の核のなかには、2対の染色体があります。
その染色体の端っこには「テロメア」と呼ばれるものがあり、これが寿命を決めているのです。
テロメアは、染色体の端っこにあるキャップのような存在で、細胞が分裂するたびに短くなっていきます。
よく回数券にたとえられるのですが、分裂するごとに回数券が減っていって、
回数券を使い終わったら、細胞は分裂することをやめてしまいます。
分裂をやめ 老化した細胞は、
その細胞が本来担っている働きを十分にできなくなるだけでなく、
炎症を引き起こすものをまき散らすなどの悪さもして、やがては死を迎えていく―。
つまり、テロメアが短くなることは、すなわち細胞の老化を意味していて、
テロメアの長さが細胞の寿命を左右しているのです。
人間の細胞の場合は、50回もコピーしたら文字が読めなくなってしまう。
そこから導き出される最長の寿命が、120歳といわれています。
直接左右している一つがテロメアです。
しかも、テロメアの長さは生まれつき個人差があり、
テロメアが長い人もいれば短い人もいる。
さらに、テロメアが短くなっていくスピードにも個人差があり、
短くなるスピードが速い人もいれば遅い人もいるのです。
その生まれつきの個人差は遺伝子によって決められます。
でも、後天的な努力で、テロメアが短くなるのを遅らせたり、
さらにはテロメアを伸ばしたりできることがわかってき
ました。
実は、私たちの体には「テロメラーゼ」という酵素があり、
これがテロメアを修復してくれるのです。
だから、もともとテロメアが短い人も、
短いからといって必ずしも短命になるわけではありません。
「どう生活するのか」で運命を変えられるのです。
テロメアを伸ばす方法としてわかっているのが、運動です。
それもハードなトレーニングではなく、軽めの有酸素運動が効果的。
テロメアという観点からも、やっぱり歩くことが有効なのです。
テロメア研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーンさんも、
著書『テロメア・エフェクト』(エリッサ・エペルさんとの共著)の中で、
「テロメアの健康を保ちたければ、運動をすること」
「中程度の運動で体を鍛えるのが、テロメアに良いのは明らか」と書いています。
ある研究では、中程度の有酸素運動を45分間、週3回ペースで半年続けてもらったとこ
ろ、テロメラーゼの値は2倍になったそうです。
●運動をする人のテロメアは、しない人に比べて長い
●座ってばかりいる人のテロメアは、少しでも運動をする人に比べて短い
といったことが、いろいろな研究結果から共通してわかっています。
逆に、テロメアを短くすると指摘されているのが、ストレスです。
心理的なストレスを受けやすい人、心配性の人は、総じてテロメアが短い。
そういう人はなおさら、歩くことが大事。
体を動かすことは、ストレスによってテロメアが蝕まれるのを緩和してくれます。
多数の女性を対象としたある研究では、高いストレスを感じている女性は、ストレスが
少ない女性に比べてテロメアが短い傾向があったものの、その傾向は、日常的に運動をし
ていない人ほど顕著でした。
ストレスとの関係でいえば、瞑想や気功もストレスをやわらげるとともに、テロメアを
修復するテロメラーゼを増やす効果があると証明されています。
結局は、昔から脈々と続いているものは本物なのですね。
ちなみに、がん細胞のテロメアは無限に伸びます。だから、無限に増殖する。
テロメアを無限に伸ばせる術を身につけたのが、がん細胞なのです。
遺伝子がまったく同じ双子でも、同じように老化が進むわけではありません。
子どものころはそっくりでも、大人になって、環境や生活習慣に違いが出るにつれ、
見た目にも体にも違いが出てきます。
実際、双子同士でも、体をよく動かすほうは、あまり動かさないほうに比べてテロメアが長いことがわかっています。
歩く効能は多岐にわたるので、いろいろなことが関係していますが、
歩くことで遺伝子のスイッチが変わり、
テロメアの短縮を遅らせることができるから寿命が延びるということは確かに言えます。
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