「トランプ錯乱症候群」(TDS)って何? 精神疾患に分類すべきと共和党が法案提出へ© ニューズウィーク日本版
トランプを批判する人は錯乱している? (3月16日) REUTERS/Kevin Lamarque
<トランプを批判する人を精神疾患呼ばわりするTDSは、側近や支持者たちが使ってきた言葉だが、これを法制化しようという動きがミネソタ州議会から飛び出した>
ミネソタ州議会の上院議員(共和党)5人は17日に、「トランプ錯乱症候群」(TDS)を精神疾患に分類する法案を提出する。トランプが錯乱しているのではない、トランプに関する被害妄想症のことだ。彼らはこのTDSを、ドナルド・トランプの大統領就任に関する「被害妄想の急性発症」と定義している。
大統領選挙運動の間、トランプとそのトップ・コミュニケーションアドバイザー(現大統領報道官のキャロライン・レビットや広報部長のスティーブン・チャンを含む)は、トランプ陣営を批判する人々のことを「トランプ錯乱症候群の重症例」だと繰り返し非難してきた。共和党の政治家やトーク番組の司会者などもこの言葉を使っている。
TDSを精神疾患として分類しようとする法案は、精神疾患に関する診断の政治化を招くという懸念を引き起こす。それが不適切な治療や、他の精神保健上の問題の軽視、何より、反対意見や政治的表現の抑圧に利用される可能性がある
この法案はミネソタ州上院保健福祉委員会に提出される予定だ。法案の内容は13日からオンラインで公開されている。
法案の共同提案者である5人の州上院議員、グレン・グルーエンハーゲン、ジャスティン・アイホーン、ネイサン・ウェセンバーグ、スティーブ・ドラズコウスキー、エリック・ルセロは、TDSを精神病の定義に追加し、法令を改正して州の法律で明確に位置付けるべきだと論じている。
議員らによれば、TDSの症状には「トランプに誘発されたさまざまなヒステリーが含まれ、それによってまっとうな政策とトランプ大統領の精神的病理の兆候を区別することができなくなる」という。
症状は、トランプに対する激しい罵りや支持者に対する「あからさまな攻撃や暴力行為」として現れることもある、とする。
民主党およびこの法案に批判的な人々は、TDSは症状といえるかどうかすら怪しく、その存在を裏付ける臨床データもないと主張。むしろ、トランプへの批判を封じるために使われる政治的レッテルではないかと批判する。
また事実や結果にかかわらず、無批判にトランプを擁護する熱狂的な支持者にもTDSが適用されるのではないかとする指摘もある。
ミネソタ州では、民主党の傘下組織であるミネソタ民主農民労働党(DFL)が、上院で1議席の僅差で多数を占めている。一方、ミネソタ州下院はDFLと共和党がそれぞれ67議席を占め、互角の状態だ。
Xで100万人のフォロワーを持つ反トランプのインフルエンサー、エド・クラッセンシュタインは16日にこう投稿した。「ミネソタ州上院の共和党は、『トランプ錯乱症候群』を精神病として分類する法案を提出した。ミネソタ州の民主党も『MAGA』をカルト宗教として分類する法案を提出すべきではないか」
ホワイトハウスのキャロライン・リビット報道官は2月、Xへの投稿でこう主張した。「トランプ錯乱症候群は、連邦政府の何十億ドルもの無駄づかいや不正、乱用を削減しようとするトランプ大統領の常識的な取り組みに、民主党とメディアが反対する原因となっている。彼らは、公約を実際に実行する大統領がついに誕生したことに耐えられないのだ」。
マンディ・タヘリ
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