何衛東(共産党中央軍事委員会副主席、習近平の最側近) 失脚か? 反習近平勢力による? 

「習近平の最側近」が中央軍事委員会から「徹底排除」へ…「軍人政変」で迎える中国の「重大な転換点」

ある軍人の動向が

中国全人代閉幕の3月11日から、共産党中央軍事委員会副主席の何衛東氏が公の場に姿を一切、現してない。彼の消息に関する公式報道も一切ない。

3月13日、中国共産党政権が「反国家分裂法施行20周年記念座談会」を開いた。何氏は出席すべき立場ではあるが何氏が欠席した。そしてこの日以降、海外亡命の複数の中国人ジャーナリストや言論人が相次いで、何氏の拘束・失脚との未確認情報を伝えた。

3月20日に習近平主席が雲南省で解放軍将校に接見した時も、いつもの同伴者である何氏は姿を現さなかった。そして、26日、米国のワシントン・タイムズ紙は、米国防省関係者からの情報として、「何衛東失脚が確認された」と報じた。

翌27日、中国国防省の定例記者会見で、記者から「何衛東拘束」について質問されたところ、国防省報道官の呉謙氏は、「これに関する情報はありません。状況は把握していません」と答えて大きな注目を集めた。

もし、「何衛東拘束」は全くのデマであるなら、国防省報道官はそれを明確に否定したはずだし、むしろ全力で否定しなければならない。しかし、いっさい否定せずにして明確な答えを避けている報道官の言い方はむしろ、「何衛東拘束説」の信憑性を裏付けたとも思われる。

そして4月2日に行われた、軍の制服組のトップたちが揃って植樹に参加する恒例のイベントには、軍事委員会副主席の何衛東氏はやはり欠席となった。筆頭副主席の張又侠氏は何氏と習主席以外の軍事委員会委員全員を率いてイベントに参加した。

以上のような公開情報から総合的に判断すれば、「何衛東拘束」はかなりの現実味を帯びてきていると思われる。もしそれが事実であれば、中国軍と習近平政権を根底から揺るがす一大事件である。

習近平の軍支配の中心

事の重大さを理解するためにまず、何氏の経歴と習近平主席との関係性を見てみる必要がある。

何衛東氏は福建省出身の軍人であって、1972年に入隊以後、解放軍第31軍で長く勤務。2007年に第31軍を再編成した第31集団軍の幕僚長に昇進、2012年末までに第31集団軍に在籍した。

解放軍第31軍は1949年から福建省厦門市に駐屯、1985年に第31集団軍に再編成、依然として福建省に駐屯、2017年、解放軍第73集団軍に再々編成された。

習近平主席は1985年から88年までに、第31軍の駐屯地である福建省厦門市で党委員会常務委員・副市長を務めた。その時に何衛東氏との接点が出来た。以来、習氏は2022年までに福建省内で昇進を重ねたが、その間、解放軍福州市軍区第一書記、福建省国防動員委員会主任も務めていたから、第31軍との接点が多くあり、何衛東氏はその間、習近平の知遇を得て腹心軍人の一人となった。

そして2012年11月に習近平政権誕生の直後から、何氏は軍での昇進を重ねた。2013年1月に南京軍区副幕僚長、同年7月に江蘇省軍区司令官、2014年3月に解放軍上海警備区司令官、2016年5月に西武戦区副司令官、2019年12月に東部戦区司令官となった。2022年10月の党大会では、2段跳びで共産党中央政治局員に大昇進したと同時に、中央軍事委員会副主席に抜擢された。昨年11月に失脚した中央軍事委員会政治工作部主任の苗華(第31軍出身)と同様、何氏は軍における習近平派重鎮の一人であって、習近平による軍掌握の一翼を担う人間である。

さらに徹底的に

現在、中央軍事委員会は習近平が主席で、制服組の張又侠氏と何衛東氏の二人が副主席を務める指導体制であるが、その中で、筆頭副主席の張氏は軍における反習近平の中心人物となっている。何氏は、習近平の軍に対する支配の最後の砦である。昨年11月の苗華失脚に続いて、もし何衛東氏までが失脚したのであれば、それは当然、軍における習近平派の完全崩壊と、習近平による軍支配の完全終焉を意味する。

「何衛東失脚」を策定して進めたのは当然、張又侠氏とその一派であろうと思われる。つまり反習近平派の張氏らは、まずは昨年の11月に苗華を失脚させた、そして今度は何衛東までも葬り去ることによって、軍における習近平の右腕と左腕の両方を切り落とし、習近平の軍支配体制をひっくり返したわけである。

実は、3月13日から「何衛東失脚」を先駆けて報じた海外の中国人ジャーナリストたちは3月下旬になると、前述の苗華氏、何衛東氏と繋がっている解放軍東部戦区司令官の林向陽氏やロケット軍司令官の王厚濱氏が拘束されたとの未確認情報も伝え始めている。もしそれも本当であれば、習近平一派を軍から徹底的に排除する「軍人政変」が着々と進んでいることとなる。

建国以前から党に属する「党軍」として、共産党権力の支配力の源泉である解放軍から、党総書記であり国家主席である習近平氏の勢力が完全一掃されるということになると、水面下で、中国の政治は十数年以来の重大な転換点を迎えたこととなるのである。

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