米中の報復合戦
トランプ米大統領は9日、中国にかける追加関税を125%に引き上げ
ると宣言。
これに対抗して、中国政府は10日に米国からの輸入品に8%の追加関税を発動。
中国からの報復で米国側に打撃となるのが、レアアース(希土類)の調達
ハイテク産業や電気自動車(EV)に不可欠。
例えばイットリウム 防衛分野から発光ダイオード(LED)まで幅広く使われる。
中国政府は一連のトランプ政権への報復措置として、
関税とは別にレアアースの輸出規制を強化している。
イットリウムも規制対象品目に含む。
独調査会社スタティスタによると、
米国は輸入する9割を中国に依存している。
ゲルマニウムやカリウムなども、輸人の5割を中国に頼る
米国が 国内生産拠点の拡大を目指す半導体の製造に不可欠
米小売企業が取り扱う雑貨や家電製品なども対中依存度が高い。
米家電量販店大手ベストバイは売上原価の6割ほどが中国経由だと説明する。
関税の価格転嫁で値上げを余儀なくされれば、既存店売上高が減少する可能
性があるとしている。
中国メディアなどによると、米小売り大手のウォルマートは中国の主要
な調達先企業に値下げを要請している。衣類や台所用品の製造元に10%以
上の引き下げを求めているという。中国政府はウォルマートの購買担当者
に面会を求め、値下げ要求をしないように「圧力」も加え始めた。
スマートフォンやノートパソコンは輸入の対中依存度が高く、値上げに
なれば消費者への影響が大きい。
レノボ・グループなどのパソコン大手が取引先に対し、生産拠点から米国
に販売する製品の出荷を2週間停止するよう要請した
スマホも同様に、値上げの観測が高まっている。米アップルのiPh
oneは米国販売分のほとんどを中国で組み立てており、高い対中関税に
直面する。 インドから米国への輸出を増やして対応するとみられる。
米国から中国への輸出にも影響が広がる
3月の米国から中国向けの牛肉の輸出は92%減った。
世界最大の液化天然ガス(LNG) 輸出国である米国と輸入国である中
国
中国が9日打ち出した報復関税を受け
中国の米国産LNGの輸入は激減し、他市場への転売が増える公算が
大きい。
かち合う米中を横目に、LNG購入で中国と競合する欧州や日本
は思わぬ「漁夫の利」を得る可能性がある。
英LSEGが算出する欧州の天然ガス指標であるオランダTTF(翌目
渡し物)は9日、一時1メ時当たり3台半ばと、
2024年7月末以来約8カ月ぶりの安値を付けた。
きっかけは中国政府が9日、10日から米国からの全ての輸入品に8%の追加関税を課すと発表したことだ。
トランプ米政権による中国製品に対する追加への対抗措置だ。
トランプ米大統領は一部の国・地域に対して相互関税の実施を8日間停止すると発表した。
だが、報復措置を打ち出した中国に対しては、関税を125%に引き上げるとした。
米国からの全ての輸入品に8%の追加関税を課すことで、
大きな影響を受けるのがLNGだ。
高関税の影響で米国産LNGの対中輸出は事実上停止する公算が大きい。
(中国では対抗措置の第1弾として2月に決定したLNGへの15%の報復関税がすでに発効している。)
欧州調査会社ケプラーの船舶追跡データによれば、2月6日以降中国で荷降ろしされた米国産LNGはゼロとなった。
高関税が撤回されない限り、この状況が続く可能性は高い。
中国による米国産LNGの輸入停止、実は今回が初めてではない。
第1次トランプ政権時に米中の貿易摩擦が深刻化した
19年4月~20年3月にかけても、中国の輸入は途絶えた。
中国は当時の状況やその後のウクライナ危機も教訓に、
ここ数年エネルギー安全保障を重視し、供給源の多様化を進めていた。
ライスタッド・エナジーの尾高昌典シニア
・アナリストは
「国内石炭の増産や、ロシアからのパイプラインガスの輸入を増やし、
LNG輸入に頼らなくて済む状況になっている」と指摘する。
中国は19年と比べても、多くの米国産LNGの長期購入契約を保有する。
自国に輸入すると高関税がかかるため、中国向けの今年の転売数量は
400万㌧強と、前年実績の約4倍に増える可能性があるという。
影響を受けるのは欧州だけではない。間接的に日本にも及ぶ可能性がある。
欧州ガス価格の下落は、日本が輸入するLNGの価格低下を通じ、電力価格低下へ。
コメント