トランプは 革命家か? 彼には 理想も思想もない

大統領執務室に座るトランプ米大統領。後ろはバンス副大統領とヘグセス国防長官

ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスにボールルーム(舞踏室)を建設すると言い出した際、側近はイーストウイング(東棟)の一部を取り壊す必要があり、日常業務や見学ツアーに支障が出ると警告した。事情に詳しい関係者が明らかにした。トランプ氏はそれでも建設すると述べ、契約はホワイトハウスが選んだ業者に与えられた。

トランプ大統領の1期目では、政権高官らは関税、移民、米連邦準備制度理事会(FRB)の支配など、大小さまざまな問題でトランプ氏の衝動を抑制していた。

一方2期目では、トランプ氏を思いとどまらせようとする人々が周囲に少なくなっている。ホワイトハウス当局者やトランプ氏の協力者、大統領職の観察者らはそう指摘する。

1期目の政権で立法問題担当ディレクターを務めたマーク・ショート氏は「トランプ氏は、自分のやりたいことを止められるものはほとんどないと学んだのだと思う」と述べた。

トランプ氏は最近、郵便投票の廃止を改めて呼び掛け、地方政府に保釈保証金なしで被告を保釈する制度を放棄させる新たな方針を発表し、ボルティモアに軍を派遣する可能性をちらつかせ、ニューヨークとシカゴにも派遣したいと述べた。これらはいずれも大統領権限の範囲を超えるものだ。

その方向性を示す最も強硬な措置の一つとして、トランプ氏は25日、FRBのリサ・クック理事の解任を試み、最高裁判所との対立を引き起こした。最高裁は、中央銀行は直接的な政治的介入から保護されているとの見解を最近示していた。新たな指示の一部は顧問らが後押ししているが、他はトランプ氏自身から出ているようだ。

トランプ氏は大統領選挙戦で就任「初日」のみ独裁者になると述べていたが、2期目就任から7カ月が経過する中、権威主義的な発言をより頻繁に行うようになっている。選挙戦でのこの発言は民主党から非難を浴び、民主党はトランプ氏を民主主義への脅威だとして選挙戦を展開したが、敗北を喫した。

トランプ氏は25日、首都ワシントンでの自身の厳格な治安政策を称賛し、この話題に戻った。「多くの人が『独裁者が好きかもしれない』と言っている」と述べた後、「私は独裁者が好きではない。私は独裁者ではない」と付け加えた。

こうした動きは、米国が建国時に脱却した統治の形に再び近づくもので、連邦政府の権力を誇示し、他の大統領を抑制してきた規範を打ち破っている。

政権当局者らによると、トランプ氏は1期目とは異なり、各機関での解雇や採用を促しアイデアを提供するなど、政府の細部にまで関与している。

トランプ氏は1月の就任以来、トップレベルの大学や法律事務所、テクノロジー企業、メディア企業に脅しをかけ、広範な和解を引き出してきた。地元選出の公職者の反対を押し切ってロサンゼルスに海兵隊を派遣し、ワシントンの警察を掌握して数千人規模の軍隊と連邦職員を街頭に送り込んだ。気に入らない月次雇用統計を作成した労働省労働統計局(BLS)の局長を解任し、各省庁のキャリア職員の解任を命じ、さらには厳密には同氏が運営していない国立肖像画美術館などの機関の職員の解任も目指した。これらの措置に異を唱えた側近はほとんどおらず、むしろトランプ氏の行動は称賛されることが多かった。

トランプ氏が今年、揺れ動いた数少ない分野の一つが関税だ。金融市場の反応を懸念し、数回にわたり立場を後退させている。  ライス大学の大統領史研究者、ダグラス・ブリンクリー氏は、トランプ氏は「米国のあらゆる機関を支配下に置くこと」に動機付けられているとの見方を示した。「全員の首をつかんで『私が指揮を執っている』と言いたがっているようだ」

ワシントンでパトロールする武装した州兵(26日)

トランプ氏は、6月に陸軍創設250周年を記念して軍事パレードを開催し、大統領職を君主制的な方向に演出することも推し進めてきた。1期目の政権当局者らはこうしたパレードについて、第三世界的な見せ物のように見えると主張し阻止していた。複数の政権当局者によると、ワシントンで行われたパレードが行われた後、トランプ氏は行進に失望したと側近らに語り、米海軍は今秋、艦船を使用したより大規模な祝賀行事を計画しようとしている。

トランプ氏は大統領職のあり方を作り変える中で、米国の権力の象徴も物理的に作り直している。一部の顧問の反対を押し切り、大統領執務室を湾岸諸国の宮殿を思わせるような金色の装飾で覆い、世界の指導者や訪問者から称賛を受けていると語っている。ホワイトハウスの前庭と裏庭には新たな旗ざお2本を設置した。

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米国の歴史には、大統領職を変革した人物の例がある。アンドリュー・ジャクソンはエリート層に立ち向かい、ポピュリズムを最高位の公職に持ち込んだ。エイブラハム・リンカーンは人身保護令状を停止し(後に議会が追認)、最終的に奴隷制を廃止した。フランクリン・D・ルーズベルトは社会保障制度を構築した。

トランプ時代は、連邦権力を大統領執務室に集中させることが特徴となっている。「私には何でもやりたいことをする権利がある」と同氏は25日に述べた。

キャロライン・レビット大統領報道官は、トランプ氏が「比類のない政治的直感と、米国民が望むものを見抜く並外れた能力」によって大統領職に就いたと述べた。「トランプ大統領が意思決定者であり、素晴らしいチームを編成したことは誰もが知っている」

一部の当局者は、1期目からの急激な変化に衝撃を受けているようだ。1期目にBLS局長を務めたウィリアム・ビーチ氏は、当時はトランプ氏の側近らと頻繁に話をし、敬意を持った関係を築いていたと述べた。「政治的な干渉は一切なかった」とし、「非常に驚いている」と語った。

元当局者らによると、1期目のジョン・ケリー大統領首席補佐官らは定期的にトランプ氏の行動を抑制しようとし、例えば移民を第三国に送還しようとする試みを阻止した。国家経済会議(NEC)委員長を務めたゲーリー・コーン氏は1年にわたり関税措置に反対し、ホワイトハウスの法律顧問だったドナルド・マクガーン氏は司法省の調査への干渉に警告を発し、財務長官だったスティーブン・ムニューシン氏はFRBの独立性を損ねようとする試みに異議を唱えた。

2期目のトランプ氏はより頻繁にホワイトハウスにいることを望んでおり、大統領執務室のドアを開けて大音量で音楽を流し、夜遅くまで仕事を続け、顧問らに『楽しんでいる』と話している。スタッフとの対立や捜査に直面していた1期目について、時にどれほど惨めだったかを側近らに語って聞かせている。

同氏は1期目には文化施設ケネディ・センターやFRB、国家安全保障会議(NSC)、国防総省、司法省についてよく不満を漏らしていたものの、実際にはこれらの組織を変えるための行動はほとんど取らず、自身の権限に制限があることを受け入れているようだったと、元政権当局者らは語る。リベラルと見なされた大学や法律事務所に対抗することにもほとんど関心を示さなかったという。

現在の大統領首席補佐官であるスージー・ワイルズ氏は、トランプ氏の個人携帯電話の使用を制限したり、意思決定を思いとどまらせたりすることはしていない。ワイルズ氏は自身の仕事は大統領ではなくスタッフを管理することだと周囲に述べている。トランプ氏の閣僚らも、今回は大統領職に関する同氏のビジョンに賛同している。

われわれは革命の最中にいると確信している」と、ブルック・ロリンズ農務長官は26日の閣僚会議で述べ、トランプ氏の指揮下における米国の変化を1776年の建国と南北戦争になぞらえた。「これはドナルド・トランプ氏が先導する第3の革命だ」

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