保守派の米活動家チャーリー・カーク氏の追悼集会に集まった人々=11日、ユタ州オレム/Lindsey Wasson/AP© CNN.co.jp
ニューヨーク(CNN) 米国の保守系政治活動家チャーリー・カーク氏の殺害をめぐるSNSの投稿やメッセージをめぐり、活動家や共和党の公職者、個人情報公開サイトによって注目が集まっている。これは、こうしたメッセージを投稿した人物を処罰するためのオンラインキャンペーンの一環とみられている。
著名な極右インフルエンサーのローラ・ルーマー氏や米共和党の上院議員、そして「チャーリーの殺人犯を暴露」と名付けられた匿名サイトはいずれも、カーク氏の殺害に関するメッセージを投稿した人々に注目するよう促している。
こうしたキャンペーンはSNSの投稿や個人的なメッセージが、フォロワーの少ないアカウントや有名ではない人のものであっても簡単に表面化して公表され、個人情報の漏えいもかつてないほど容易になった時代に、人々の個人情報がネット上で拡散される可能性があることを示唆している。
この匿名サイトは、「個人情報をさらすためのサイトではない」と主張しているものの、トップページのメッセージによれば、13日正午の時点で「約3万件の投稿を受け付けた」としており、数十件を公開済みだ。「まもなく3万件の投稿すべてを地域や業種で絞り込めるデータベースへと変換される。これは暴力の呼び掛けを行う過激な活動家の恒久的かつ継続的に更新されるアーカイブだ」としている。
公開されている多くの投稿の主は「活動家」を名乗っておらず、暴力を呼びかけているようにも見えない。サイト運営者はコメント要請に応じなかった。
ルーマー氏は10日、事件から数時間後、Xに「今夜は彼の死を祝福するネット上の人たちを有名にするために全力を尽くすつもりだ。だから、彼の死を祝うほど病んでいるなら、将来の職業の夢が全て台無しになる覚悟を」と投稿した。
X上では「トロフィーケース」と題したスレッドが立ち上がり、職を失ったとされる人々のリストを掲載している。
こうした動きのなか、ニュース専門局MSNBCは、カーク氏の過激な言動が銃撃につながった可能性を示唆したマシュー・ダウド上級政治アナリストを解雇した。ダウド氏は解雇後、ネットへの投稿で、「右派メディアの暴徒」が複数のプラットフォームで自身への攻撃をしたと述べた。
一部の人々は投稿をきっかけに嫌がらせを受けており、暴力の標的になるのではと不安を訴える人もいる。
カナダの独立系ジャーナリスト、レイチェル・ギルモア氏は、カーク氏の「極右のファン」からの報復を恐れていると投稿した。投稿は匿名サイトに最初に掲載され、ギルモア氏がカーク氏の生存を願うと書いた部分も含まれている。ギルモア氏は動画で、自身はカーク氏の死を祝っていないとし、別の投稿では生存を願っていると述べていた。それでも脅迫の「津波」を受け、この48時間は「生き地獄だった」と訴えた。
フロリダ州の新型コロナ関連の元データ科学者レベッカ・ジョーンズ氏も、死の脅迫や、「殺害予告リスト」と呼ぶ匿名サイトについて、警察に2度通報したと明かした。ジョーンズ氏は10日にカーク氏について投稿し、「MAGA(米国を再び偉大に)運動の暴力的な政治メッセージマシンに巻き込まれた無実の傍観者たちに同情を」とつづった。匿名サイトは、この投稿をジョーンズ氏の個人情報とともに再掲載した。
ノースイースタン大学の助教で「民主主義のためのサイバーセキュリティー・プロジェクト」の責任者を務めるローラ・エデルソン氏は「これは組織的な嫌がらせキャンペーンと呼ぶのが妥当だろう」と指摘。匿名サイトは、選ばれた個人を標的に組織的に嫌がらせを行うために存在しているとの見方を示した。
共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、ミドルテネシー州立大学の職員が、カーク氏の死に対して「同情はゼロだ」と投稿したことを受けて解雇を求めた。同大学はCNNに「即時解雇した」と認めた。ブラックバーン氏は声明で、「カーク氏の暗殺を称賛するような大学職員は教室で次世代の思考を形作る役割を担うべきではない」とし、解雇は正しい判断だと述べた。
ノースカロライナ大学のジェフリー・ハーシュ教授(労働・雇用)によると、米国ではほとんどの地域で、民間企業は従業員をいかなる理由でも解雇でき、そこには不適切なSNS投稿も含まれる。公務員の場合はやや複雑だが、発言が「業務を著しく妨げる」ほど悪質なら解雇は正当化されるという。
ただし教師の場合は、若者と接する職業であり、特に政治的暴力を称賛するような投稿は問題視されやすいとハーシュ氏は指摘。「現状では、たとえ特定の政治勢力からであっても苦情が殺到すれば、雇用主は従業員を解雇せざるを得なくなる可能性が高い」
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