トランプ米大統領が9月29日に20項目の「ガザ紛争終結のための包括的計画」を提案したことを機に、イスラエルとパレスチナの恒久的和平、そして中東全体の和平の機運が高まっている。これは1993年のオスロ合意以来のことだ。
このプランにより、目の前の戦闘を終結させることはできるだろう。しかし、永続的な平和を実現するには、米政府がイスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの双方に圧力をかけ続けること、サウジアラビアなどのイスラム諸国が関与すること、そしてハマスとイスラエルの右派による和平合意崩壊を防ぐことが必要となる。
「包括的計画」合意に盛り込まれたいくつかの要素
イスラエルとハマスは停戦に合意する
イスラエルはガザの一部地域から部隊を撤収させる
ハマスはイスラエル人の人質全てを解放する
イスラエルはパレスチナ人の囚人1000人以上を釈放する
イスラエルはガザでの人道援助活動も受け入れる。
この2年間のガザ戦争で 中東情勢に根本的な変化が起きた
イスラエルの軍事行動により、ハマスが大幅に弱体化した。
イスラエルは、レバノンのシーア派組織ヒズボラを壊滅的な状態に追い込んだ。
イスラエルは、(長く敵対関係にあった)シリアのアサド政権を崩壊させた、
イスラエルは、(これらの勢力を支援してきた)イランにも空爆で大きなダメージを与えた
*イスラエルを 勢いづかせたのは、 トランプ
恒久平和に必要な3つの要素とは
一方、イスラエル国民の3人に2人は、戦闘の終結を望んでいる。加えて、7月には、アラブ連盟が初めてハマスに対して武装解除と戦争終結を求めた。
最も見落とせないのは、トランプがイスラエルのネタニヤフ首相に圧力をかけてきたことだ。トランプ以外のアメリカ大統領であれば、米議会のイスラエル支持派の圧力を跳ね返せなかっただろう。
「包括的計画」のほかの3つの要素も実現すれば、真の和平合意、そして中東全体の和平への道が開けるかもしれない。しかし、いずれも実現は容易でない。
■治安
「包括的計画」はハマスの全面武装解除を求めているが、ハマスはこれを受け入れていない。また、和平合意の履行を確保するために「国際安定化部隊(ISF)」を展開させるというが、ハマスはこれにも反対している。
■統治
「包括的計画」では、
政治的に中立な実務家による暫定委員会が戦後のガザ地区の統治を担う
パレスチナ自治政府の改革が完了した段階で自治政府に引き継ぐ
ものとされている。この改革によりハマスは排除されるが、ハマスはガザ地区の統治に参加することを譲っていない。
■復興
「包括的計画」に基づくガザ復興は、イスラム諸国が拠出する530億ドルの資金に依存していて、この資金の大半はサウジアラビアが負担することになる。しかし、サウジアラビアはアメリカとの「大型取引」を資金拠出の前提にしている。
サウジアラビアの果たす役割
具体的には、
アメリカがサウジアラビアの(イランからの)安全を保障する
サウジアラビアの核開発を支援する
(パレスチナ国家を承認するのと引き換えに、)サウジアラビアが中国と距離を置く
サウジアラビアはイスラエルと和平合意を結ぶ
しかし、現時点でそうした取引は成立していない。
トランプがネタニヤフに圧力をかけたことで戦闘は止まったが、恒久和平を実現するには、アメリカが長期にわたり関与し、圧力をかけ続けなくてはならない。問題は、トランプが根気よくそうした行動を取れるかどうかだ。その性格を考えると、まるで「らしくない」が。
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