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ドナルド・トランプ大統領は21日、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)で、グリーンランドの買収方針を撤回する代わりに、ミサイル防衛網「ゴールデンドーム」の設置と、鉱物資源へのアクセス権を確保したと主張し、大きな成果だと強調した。これに対し米主要メディアは、トランプ大統領が得たとする権利は、米国がすでに数十年前から持っていた内容だとして、今回の発表は政治的な言い換えに過ぎないとの見方を示している。
①「ゴールデンドーム」設置権限 1951年協定で既に大枠
トランプ大統領はダボスで、グリーンランドを買わない代わりに、同地に米国の防衛網であるゴールデンドームを整備することで合意したと述べ、NATOやデンマークとの交渉を通じて新たな安全保障上の権限を得たかのような印象を与えた。
しかし、米国は1951年にデンマークと結んだグリーンランドの防衛に関する協定に基づき、グリーンランド内で軍事施設を設置・運用する枠組みをすでに有している。現在も米宇宙軍は、北西部のピトゥフィク宇宙基地(旧チューレ空軍基地)で、米本土に向かう大陸間弾道ミサイル(ICBM)などを探知する早期警戒レーダーを運用している。
ワシントン・ポストは、既存の取り決めの範囲でデンマーク側との実務協議を経れば、基地の近代化や防衛システムの増強は可能だとの見方を示し、ゴールデンドームは新たな権利獲得というより、既存の権限に名称を与えて目立たせたものだと分析した。そもそも防衛網の整備を理由に、グリーンランドを買収する必要性は乏しかったという。
②鉱物資源のアクセス権 米企業は既に事業を進めている
トランプ大統領が別の成果として挙げたレアアースなどの鉱物資源へのアクセス権についても、誇張だとの指摘が出ている。CNNは、グリーンランドの鉱物分野は以前から米国を含む西側企業に開かれていたとの趣旨で反論した。
実際、米企業のコボルド・メタルズやクリティカル・メタルズなどは、今回の発言以前からグリーンランド自治政府の許認可の下で探査を進めているとされる。グリーンランドの制度上、外国企業でも採掘権(Exploitation License)を取得すれば、採掘した鉱物の所有や販売を行える仕組みだという。
米経済メディアは、参入の可否よりも、採算性と環境条件が事業の障壁になっていると伝えている。道路や港湾などのインフラが限られるうえ、採掘可能な期間が短く、氷河や流氷の影響で輸送面の制約も大きいとされる。こうした状況の中で、もともと開かれていた市場を、あたかも交渉で切り開いたかのように示した構図だという。
③買収断念の「出口」づくり 政治的な再演出か
米メディアは、明白な既存の枠組みを大きな合意として打ち出した背景に、政治的な計算があるとみている。トランプ大統領のグリーンランド買収構想は、デンマーク政府やグリーンランド側、現地住民から強い反発を招き、非現実的だとの批判も受けていた。
さらにトランプ大統領は、軍事力でグリーンランドを奪取しないとする趣旨の発言をしたほか、買収に否定的だと受け止めた英国、フランスなど欧州8か国に対し、2月1日から賦課するとしていた懲罰的関税を撤回したとされる。買収方針を引っ込めざるを得ない局面で、手ぶらではなく、買収に匹敵する実利を得たという説明が必要になったとの見方が出ている。
ワシントン・ポストは、関税をてこにデンマークやNATOへ圧力をかけたうえで、既存の協力枠組みを新たな合意のように発表し、体面を保ったとの趣旨で伝えた。

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