グレース・エンバリーさんの子どもたちは毎日でもすしを食べたいと思っている
カナダ西部カルガリー在住の専業主婦グレース・エンバリーさん(43)は、金融面で自身最悪の決断は、子どもたちにすしを覚えさせたことだと語る。
それは半分冗談だが、エンバリーさんはエリオット君(8)とシャーロットさん(6)がよくリクエストする食べ物を挙げ、ため息をついた。「サーモンロール、ツナロールに、玉子。彼らは野蛮人みたいに、ただ全部を食べ尽くそうとする」
2人は毎日でもすしを食べたいのだが、エンバリーさんは週に一度の外食に限定している。食事代は150ドル(約2万3500円)になることもある。彼女は手早く便利だという理由ですしを食べさせ始めたが、子どもたちを小さな「食通」に変えたことを今や後悔している。
「時々『チキンナゲットかグリルドチーズサンドにしない?』と言ってみる」と彼女は言う。
エリオット君はすしの何が好きかと尋ねられ、「すしはワクワクするけど、好きなわけじゃない」と答えた。彼によると、風味を楽しんでいるが、特に感動しているのはすし店では料理がベルトコンベヤーで運ばれてくることだという。
2010~24年頃に生まれたアルファ世代は、えび天ロールやサーモンの握りの味を覚えてしまった。そして親たちは高い代償を払っている。
「おまかせの客の中には6歳もいる」。米ニュージャージー州に2店舗を持つすし店「Shumi」のシェフ兼オーナーであるデービッド・シオさんはこう語る。彼の店は午後4時から7時の時間帯に、1人95ドルで15貫を食べる家族連れで満席になるという。「それは宿題を終えたご褒美だと親たちは話している」
コネティカット州ノーウォーク在住の歌手アシュリー・バプティストさん(32)は、5歳と3歳の娘たちが「いつだってピザよりもすしを選ぶ」と語る。彼女はある時、婚約パーティーに出席するため、娘たちを父親に預けた。その夜遅く、父親は不意打ちを食らったと電話をかけてきた。
「歯ブラシやおむつで困っているのかと思ったら、そうではなかった。娘たちは夜9時にすしを注文してほしいと頼んだのだ」。バプティストさんはそう語った。
すし店は1960年代後半に米国に登場し、当初は米国のビジネスマンや日本人の同僚の間で人気となった。2008年刊行の「The Story of Sushi(すし物語)」の著者であるトレバー・コーソン氏はそう述べた。すしは70年代に著名人(セレブ)の人気を集めたが、一般人に普及するのはさらに数十年後の話だ。冷凍技術の発達で、生魚が食品スーパーや大衆向け飲食店にも届くようになったと、同氏は説明する。
コーソン氏によると、すし店は今や至るところにあり、アルファ世代には生魚を食べることへの「文化的障壁」がないという。同氏はまた、すしが子どもの間でより人気が高いのは、砂糖が含まれているためだと考えている。「米に砂糖を混ぜる量が多ければ、それだけ客はすしをよく食べる」と、すし職人から聞かされたという。
消費者行動の分析を手がけるサカーナによると、食品スーパーを含む小売店でのすしの売上高は、2025年11月までの12カ月間に29億ドル(約4500億円)に達し、前年同期比7%増となった。
「子どもたちは大人になった気分になれる」。(ユダヤ教の戒律に従う)コーシャの飲食店を運営する「リザーブ・カット・ホスピタリティー」の料理ディレクター、アイザック・バーンスタイン氏はそう述べた。この店では30ドルのクリスピーライス・ツナ・スクエアが低年齢の来店客によく売れている。「大人の食べ物なので、多分成長した気分を味わえるのだろう」
ラウレアノ・エスコバルさんは娘のミミさんと初めてすしロールを分け合った際、請求書を見て驚いた
テキサス州ダラス在住のシェフ、ラウレアノ・エスコバルさん(40)は、娘のミミさん(6)が見た目の美しさに引かれたと確信している。「娘はプレゼンテーションに魅了された」と彼は言う。
「娘はフライドポテトやチキンナゲットを欲しがらない。えび天ロールを欲しがる」。初めて数本のすしロールを分け合った際、エスコバルさんは請求書を見てあぜんとした。「120ドルという金額に『なんてことだ』と思った。私たちは娘を何か別のことに夢中にさせなくてはいけない」
それではなぜ、すしの習慣を断たないのか。親たちによると、経済的な配慮と子どもたちに好きなだけすしを食べさせることの利点をてんびんに掛けている。高価かもしれないが、他の子ども向け食品よりも栄養価が高い。エスコバルさんは自分の娘が料理で冒険しているのを誇りに思うと語った。
ワシントン州ニューマンレイクの小学3年生、レボン・ホワイト君(8)は月に一度、親友の祖母を訪ねる際に、すしを注文すると語った。祖母は喜んで支払いをしてくれる。「おいしいから、そして主に体に良いから好きだ」とレボン君は語ったが、最近試した新商品のスパイシーなツナロールは「マイナス100万点」と評価した。
レボン君の母親で、カイロプラクターのキム・ホワイトさん(40)は、大人になるまですしを試したことがなかったから、子どもたちの食通ぶりに驚いていると話す。「私たちは恐らく自分たちの両親に比べて食べ物にお金をかけていると思う」
スペイン在住のプロバスケットボール選手、ディラン・エニスさん(33)は、すし好きの息子を定期的に外食に連れて行く。4歳ながら上手に箸を使いこなす息子の姿に、人々が反応するのを楽しんでいるという。
「私は家庭料理で育ち、マクドナルドで(子ども向けメニューにおもちゃが付いた)ハッピーセットを食べるのが人生で最高に幸せな日だと思っていた」と、エニスさんは言う。「妻と私は、自分たちがその存在すら知らなかった人生を送る子どもたちを育てているのだと、冗談を言い合っている」
ディラン・エニスさんは、息子のチャンス君が上手に箸を使いこなす姿に、人々が反応するのを楽しんでいるという
高級パーティープランナーのミシェル・シューイさんは、トゥイーン(8~12歳)の子どもたちの誕生日にすし職人を呼ぶ親が増えていると話す。彼女は最近、8歳の子どものためにニュージャージー・カントリークラブで「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」をテーマにした誕生日パーティーを開催し、大皿に盛ったすしを並べた。
「まるで以前のチキンフィンガーのようだった」とシューイさんは言う。
ニューヨーク・マンハッタンのアッパー・ウエストサイド在住のエリカ・プライアーさんは、すしに目がない娘イジーさんのため、昨年4月の8歳の誕生日にプライベートシェフを雇い、娘と友人らにすしの作り方を教えた。手作りのすしを口にするのを怖がる子どももいたが、パーティーは全体的に好評だった。「誰もが夢中になった」とプライアーさんは言う。「実際には みんなちゃんと食べられた」

コメント