イランに残る核の火種、理由
米国のドナルド・トランプ大統領は、イランの核兵器開発能力を排除したとして、近く米軍をイランから撤収させる考えを示した。だが、今回の戦争の出発点ともいえる高濃縮ウランの備蓄は、なおイラン国内に残っているとみられている。
トランプ大統領は3月31日、SNSで、我々はイランの核能力を排除し、政権交代も達成したと主張したうえで、自身の唯一の任務はイランに核兵器を持たせないことだと投稿した。
同日、ホワイトハウスの大統領執務室でも、目標は一つであり、イランに核兵器を持たせないことで、その目標は達成されたと強調している。
しかし、ニューヨーク・タイムズは同日の報道で、米国とイスラエルがイランの核燃料を除去、もしくは破壊したことを示す証拠は確認されていないと指摘した。さらに、米国のマルコ・ルビオ国務長官や米国のピート・ヘグセス国防長官らトランプ大統領の側近が、戦争目標の説明を次第に狭めていると伝えた。
実際、トランプ大統領は開戦当日の2月28日、国民向け演説で、長距離ミサイルと核兵器で武装したイラン政権は、すべての米国民にとって恐ろしい脅威になり得ると述べ、今回の戦争の大義としてイランの核兵器問題を前面に押し出していた。
ところが最近、ルビオ長官が示したイラン戦争の4大目標には、イランの核計画停止が含まれていない。開戦当初に掲げた先制攻撃の大義は薄れ、戦争目的も終戦協議が取り沙汰される現在までたびたび揺れ動いている格好だ。
一方で、高濃縮ウランを守り切ったうえ、ホルムズ海峡の統制力を強めて戦況を左右しているとして、イランを現時点の戦略的勝者とみる見方も出ている。
ブルームバーグ通信は、米国とイスラエル、イランによる1か月に及ぶ戦争で最も重要な戦略的勝利を収めたのは、ホルムズ海峡の統制を強化したイランだと評価した。
最大の問題は、トランプ大統領が開戦の大義とし、いまは終戦の根拠としても掲げるイランの核脅威が、なお消えていないとの見方が強いことにある。
ニューヨーク・タイムズは、今後2〜3週間で状況が変わらなければ、イランは高濃縮ウラン970ポンド、約440キロを保有し続けることになり、これは核爆弾10〜12発分に相当すると伝えた。これに加え、追加濃縮が可能な中濃縮ウランも相当量残っていると指摘している。
同紙はさらに、米国とイスラエルが、核燃料が地下にあるとされるイスファハンとナタンズの施設への急襲を検討してきた一方、実際にウランが搬出されたことを示す状況証拠は出ていないと付け加えた。
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長も、今月初めにワシントンを訪れた際、イランの核物質が昨年6月の空爆前後に現場を離れたことを示す証拠は確認していないと明らかにした。
これに先立ち、複数の海外メディアは、トランプ大統領が特殊部隊を投入し、イランの核施設から高濃縮ウランを搬出する案を検討していると報じていた。
実際、米政権は数週間前まで、特殊部隊が30〜50個の容器に分散保管された高濃縮ウランを確保する案を積極的に協議していたとされる。
現在、米地上軍は中東に相次いで到着しており、このうち一部の特殊部隊については具体的な任務が明らかにされていない。そのため、一部では高濃縮ウランの搬出任務に投入されるのではないかとの観測も浮上した。
ただ、ニューヨーク・タイムズは、トランプ政権内でウラン搬出案への熱意がやや後退していると報じた。地上軍の投入だけでも多数の米兵の犠牲を見込まなければならず、高濃縮ウランの搬出任務はさらに危険で、米軍とイスラエル軍に大規模な人的被害が及ぶ恐れが大きいためだ。
加えて、ウランが保管されているイスファハンなどはイラン内陸の奥深くにあり、イラン革命防衛隊の防衛網を突破するのは容易ではないとの指摘もある。
グロッシ事務局長は、米国による最近の軍事攻撃でイランの核計画がかなり後退したのは事実だとしつつ、軍事作戦が終わった後も重大な問題は残るとの見通しを示した。

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