トランプも石器人 集団妄想を真実化

トランプ氏は公然と事実ではない「嘘」を発信し続けている。

第2次トランプ政権が発足してから約2カ月。驚きあきれるような言動・決定を繰り返すトランプだが、いまアメリカで話題になっているのが「マイノリティーによる貢献を特に取り上げたコンテンツを削除する」トランプの動きだ。

日本メディアでも3月19日、第二次世界大戦の戦場となった硫黄島で、アメリカ兵が星条旗を掲揚した写真を国防省が削除した問題が報じられている。この写真はピュリッツアー賞も受賞した、歴史的一枚として知られているが、写真の中に先住民の隊員が写っていることが、DEI政策の一環と見なされ、このたびの削除に繋がったものと見られている。

再びトランプ政権が始まったアメリカでは、今どんなニュースが注目され、どう受け止められているのか?

今回の原稿では、日本では詳しくは伝えられない「トランプによる混乱の日々」を複数回によって伝えたい。

3回目の今回は「隠される真実と過剰な嘘」をテーマに解説する。

シリーズ1回目…【日本メディアが伝えないトランプ】就任45日“情報の洪水”との戦い

シリーズ2回目…【日本メディアが伝えないトランプ】忠誠心で選ばれた“閣僚人事”

嘘でも、言い続ければ本当になる

大統領になってからもトランプは、よく時間があるなと思うほどに、マメにSNSを更新している。

3月10日、トランプ政権の通商・経済政策への懸念から株式市場が激しく下落した日には、一日の間に100回以上、SNS・Truth Social にポストを上げていた(ガーディアン、3月11日報道)。

それらの多くは、自らの政策についての自画自賛だったが、それ以外にも親パレスチナ活動家の逮捕の話や、イーロン・マスクがいかに素晴らしい仕事をしているかといった、目下の経済への懸念には関係のないランダムなポストも数多くあった。

マスクをほめちぎるポストの中では、「頭のおかしい狂信的な左派たち(Radical Left Lunatics)が、非合法的にテスラをボイコットしている」とも書いている。

一つ興味深いのが、トランプは選挙に勝利した割には、彼は相変わらず憎悪に満ち、ちっともハッピーそうでないということだ。

未だにバイデンはじめ民主党の悪口を言い続けているし、うまくいっていないこと(例えば物価高が収まらないことや、飛行機事故が最近やたらと相次いで起きていること、ロシアとの関係が悪いこと)は全てバイデン政権の政策のせいだと主張する。

上記のテスラについてのポストにも見られる通り、トランプは、政敵のことをまとめて「頭のおかしい狂信的な左派」と言うのが好きだ。例えば、選挙直後の昨年11月、感謝祭にあたってトランプがポストしたメッセージはこれだ。

「皆様、感謝祭おめでとう。我が国を破壊しようと懸命に努力したがみじめに失敗し、これからも失敗するであろう頭のイカれた極左の奴らも含めてな。

彼らのアイデアや政策は絶望的に悪く、それゆえに、我が偉大な国はアメリカを再び偉大にしたいと願う人々に圧勝を与えたのだ! 心配無用、我が国はすぐに尊敬され、生産的で、公正で、強い国となり、君たちはこれまで以上にアメリカ人であることを誇りに思うことになるだろう!」

和訳されないトランプの過激発言

トランプ氏の「嘘」はSNSでも散見される。

クリスマスの日にも多くのポストを連発し、その一つの中では「頭のおかしい狂信的左派」をやはり罵倒、「地獄に堕ちろと言いたい」と書いている。

そもそも、一国の大統領になるという人が、いくら政敵に対してだとしても「Go to Hell」「Radical left lunatics」などと言うだろうか?

かつてから、私は、トランプという人物の異常さや残虐性がいまひとつ日本に正確に伝わっていないという気がしているのだが、その一つの理由は、上記のようなひどい言動の一つひとつを日本ではいちいち詳細に和訳して報じていないということだと思う。

アメリカのメディアですらもはやすべてのトンデモ発言や行動を網羅することは不可能になっているのだから(このシリーズの一本目で書いた「Flooding the zone」そのもの)、外国のメディアが追いつけるはずもないのだが、日本でテレビや新聞を見ていると、トランプの言動の多くが見過ごされ、ニュアンスが甘口になって伝えられていると感じる。

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