【ニューヨーク=金子靖志、ワシントン=阿部真司】米西部ユタ州の大学で保守系団体のチャーリー・カーク代表(31)が射殺された事件で、米連邦捜査局(FBI)は11日、事件に関与したとみられる重要参考人の画像と動画を公開した。トランプ大統領は12日にFOXニュースの番組に出演し、容疑者の男が拘束されたと語った。
公開された画像と動画には、米国の国旗などが描かれた黒い長袖シャツと野球帽、サングラス姿の人物が写っていた。
捜査当局によると、容疑者は犯行の約30分前に大学に到着。建物の屋上からカーク氏を狙撃した後、屋上から飛び降りてキャンパスの外へ逃走した。近くの森林で犯行に使われたとみられるライフル銃が見つかった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、銃の中に残っていた弾丸に、トランスジェンダー擁護や反ファシズムの思想を示す刻印があったと報じた。
トランプ氏は事件を「極左」による犯行との見方を示し、敵対勢力への攻撃に利用している。11日、記者団に「この国には極左の集団がいる」と述べ、容疑者や犯行動機が明らかになっていない段階で、事件を左派勢力によるものだと非難した。
政権は異例の対応を重ねている。哀悼の意を示すため、全ての連邦政府や軍の施設などで半旗を掲げるよう指示し、トランプ氏は米大統領が文民に与える最高位の「大統領自由勲章」をカーク氏に授与することを決めた。バンス副大統領は11日、事件現場のユタ州を訪れ、遺体を副大統領専用機でカーク氏の自宅があるアリゾナ州に搬送した。
トランプ氏は10日のビデオ声明で、「テロリズムの直接の原因は過激な左派の言論にある」と述べ、事件を左派によるカーク氏への批判と結びつけた。
声明では自らが狙われた昨年の暗殺未遂事件や、2017年に共和党議員が重傷を負った銃撃事件に言及した一方、今年起きた民主党の知事や州議会議員を標的とした事件には触れなかった。政治的動機に基づく数々の事件が、自身の敵対勢力によるものだと印象づける狙いがあるとみられる。
政敵に矛先を向けるトランプ氏の一連の発言は、歴代大統領がテロ事件後、融和や団結を呼びかけていたのとは対照的だ。米ニュースサイト・アクシオスは「米国は党派間の憎悪と過激主義によってあおられ、暴力のスパイラルに陥っている」と指摘した。
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