宗教色強める トランプ戦争

「ハルマゲドン」に十字軍、宗教色強まるイラン戦争

【AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領は対イラン軍事作戦を遂行する中、ホワイトハウスの大統領執務室でキリスト教の牧師たちと面会した。牧師たちは厳粛な面持ちで、トランプ氏の肩や腕に手を置き、祝福を与えた。

合衆国憲法修正第1条で政教分離が定められているにもかかわらず、米国はイスラム教シーア派の指導者が率いる神権体制のイランとの戦いにおいて宗教を援用しており、トランプ政権の高官の一部は、対イラン攻撃をまるで神聖な使命であるかのように捉えている。

キリスト教の復活祭(イースター)までの1週間「受難週(聖週間)」の行事で、

フランクリン・グラハム牧師はトランプ氏に対し、旧約聖書のエステル記に言及し、その中で「イラン人」(歴史的正確さについては議論があるペルシャの王)がユダヤ人を皆殺しにせよと命じた 
と述べた。グラハム牧師は、米国のキリスト教福音派伝道師で、保守派を中心に政界にも強い影響力を持ったビリー・グラハム師の息子

グラハム牧師は、「きょう、イラン人、この邪悪な政権は、すべてのユダヤ人を殺し、核の炎で滅ぼそうとしています。しかし、主はトランプ大統領を立ち上がらせになられました。このような時のために彼を立ち上がらせたのです。父なる神よ、彼に勝利を与えたまえ」と語った。

グラハム牧師は言及しなかったが、ペルシャ帝国のキュロス2世(キュロス大王)は、バビロン捕囚のユダヤ人を解放し、彼らに自由を与えた最初の国家指導者だ。キュロス2世は今も、ペルシャ帝国の系譜を継ぐイランの国民に崇敬されている。

エステル記の物語は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も繰り返し引用している。ネタニヤフ氏はユダヤ教の過ぎ越しの祭りで、米国と共同で実施している対イラン軍事作戦をユダヤ人のエジプトの奴隷状態からの解放「出エジプト(エクソダス)」になぞらえた。

1979年のイラン(イスラム)革命以来、イランは神権体制を取り、イスラム教シーア派の宗教指導者が最高指導者を務めている。

イラン軍は、米イスラエルとの戦いを「カルバラーの戦い」になぞらえている。カルバラーの戦いとは西暦680年に現在のイラク中部カルバラーで起きた戦い。イスラム教の預言者ムハンマドの孫フサインがウマイヤ朝軍に敗れ、戦死(殉教)したもので、シーア派は暴政に立ち向かう殉教と自己犠牲の行為として記念している。

■十字軍が復活

2001年9月11日の米同時多発攻撃の後、ジョージ・W・ブッシュ米大統領がアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンに対する戦争を開始した際、作戦名を「十字軍(クルセイド)」と称したが、すぐに撤回した。この言葉は西洋では比喩として安易に用いられることが多いが、イスラム世界においては歴史的重みがあることを認識していたからだ。

一方、トランプ政権のピート・ヘグセス国防長官は、そうしたためらいを一切見せていない。元FOXニュースの司会者であるヘグセスは、2020年に「American Crusade(アメリカの十字軍)」と題した著書を出版し、米国から左派を排除する「聖戦」を呼び掛けた。

ヘグセス氏のタトゥーの中には、極右が信奉する十字軍時代の象徴である「エルサレム十字」と、十字軍のモットーであるラテン語のフレーズ「Deus Vult(デウス・ウルト、神がそれを望まれる)」が刻まれている。

イスラム教徒に対するへグセス氏の見解に疑いの余地があるとすれば、彼はアラビア語で「カーフィル(不信心者、異教徒)」と書かれたタトゥーも入れている。<企業様向け>ビズリーチ

イランに「死と破壊」を降り注ぐと表明したヘグセス氏は記者会見で、「毎日、家族で、学校で、教会でひざまずき、イエス・キリストの名において祈る」よう米国民に呼び掛けた。

CBSニュースの取材に対し、ヘグセス氏は「われわれは、ハルマゲドン(世界の終末における善と悪の決戦)用の核兵器開発を目指す狂信者どもと戦っている」「私のキリスト教信仰は、兵士たちに物事の見方を教える上で重要だ」とと述べた。

■多様性の抑圧

米国防総省は近年、多様な信仰を受け入れており、従軍牧師の役割は指導者の決定を祝福することよりも、個人的な癒やしや助言を提供することに重点が置かれるようになった。

元従軍牧師で現在はジョージタウン大学で教鞭を執るケネス・ウィリアムズ氏は、「指揮権を持つ者が、軍や国家に存在する多様な信仰を無視し、えこひいきの形で信仰に基づく見解を主張することは、少なくとも無礼で軽率であり、最悪の場合は権力の乱用に当たる」と述べた。

戦争を宗教的に解釈する姿勢は、多くのキリスト教徒の心情を著しく害している。ローマ・カトリック教会初の米国人教皇レオ14世は、トランプ氏が「出口戦略」と「暴力の量を減らす方法」を模索することを望んでいる。

教皇は枝の主日の説教で、「神は戦争を仕掛ける者の祈りを聞き入れず、拒絶する」と述べた。

AFPの記者から教皇の発言について問われたホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、戦時中に兵士のために祈ることは「非常に崇高な行為」だと述べた。

トランプ政権の多くのメンバーは、公然と宗教的な言葉遣いを用いている。J・D・バンス副大統領のは対イラン軍事作戦のさなかに、カトリックへの改宗に関する著書「Communion(聖餐)」を出版すると発表した。

トランプ自身は宗教的であるとは知られていない。3度の結婚歴を持つ不動産業者で元テレビタレントの彼は、キリスト教プロテスタントの一派、長老教会で育ったが、宗教行事に出席することはほとんどなかった。

だが、政界入りしてからはキリスト教右派(保守派)に傾倒している。キリスト教右派は、トランプ氏が任命した最高裁判事のおかげで、彼らにとっての最優先事項である全米における中絶の権利の終焉が実現したとして、トランプ氏を称賛した。(c)AFP

【翻訳編集】AFPBB News

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