サウジ、イラン情勢終結後に「中東不可侵条約」推進か
イスラム教スンニ派の盟主とされるサウジアラビアが、イラン情勢終結後を見据え、イランと周辺中東諸国との間で不可侵条約の締結を推進している。ただ、イランを攻撃したイスラエルや、近年イスラエルとの関係を深めているアラブ首長国連邦(UAE)が、この構想に同調するかどうかは不透明だ。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は14日(現地時間)、西側の外交当局者の話として、サウジが同盟国とともに戦闘終結後の地域の緊張緩和策を協議する中で、中東諸国とイランとの間の不可侵条約構想が取り上げられたと報じた。同紙は、サウジ政府が冷戦下の欧州における緊張緩和に寄与した1970年代の「ヘルシンキ宣言」を、この構想のモデルとして検討していると伝えた。
1975年にフィンランドのヘルシンキで開かれた全欧安全保障協力会議(CSCE)で採択された「ヘルシンキ宣言」は、国家主権の尊重、武力不行使、国境の不可侵、領土保全、国家間協力などを定めた10原則からなる文書だ。米国と旧ソ連を含む35か国が署名し、第2次世界大戦後約30年にわたって続いた欧州の冷戦終結に大きく寄与したとされている。
イランは、2月28日に米国・イスラエルによる自国への空爆を受け、サウジやUAEを含む湾岸協力会議(GCC)加盟6か国にある米政府関連施設や民間施設、石油生産施設などに対し、無差別な攻撃を加えた。UAE国防省によると、イランは戦闘期間中、UAEに向けて弾道ミサイル550発と無人機2,200機以上を発射したという。
タイムズ・オブ・イスラエル(TOI)は13日、戦闘前からイランとの対立を深めていたサウジが、3月末に空軍を投入してイラン領内への報復攻撃に踏み切ったと報じた。過去から、イスラム教シーア派の盟主とされるイランと対立してきたサウジが、イランを直接攻撃したのは今回が初めてとされる。また、12日付の報道で、イランが5日にUAEの石油化学施設を攻撃し、これを受けてUAEが6日、イスラエルと連携して、イラン南部のサウスパルスの石油化学施設を攻撃したと伝えた。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は11日、関係者の話として、UAEが米国とイランの停戦発効直後の5月8日、イラン南部沿岸のラバン島にある製油施設を空爆したと報じた。
また、フィナンシャル・タイムズが14日に報じたところによると、サウジなどの主要国は、イラン情勢終結後もイランによる安全保障上の脅威が続くとみて、新たな地域安全保障の枠組みを構築する必要があると判断している。イラン側も、中東における不可侵体制の構築を拒む理由は乏しいとみられている。
匿名のアラブ外交筋は、「ヘルシンキ宣言をモデルとした不可侵条約は、アラブ・イスラム諸国の大半とイランに歓迎されるだろう」と述べた。「イランは長年にわたり、米国欧米諸国に対し、『中東の問題は地域の国々が自ら管理すべきだ』とのメッセージを発してきた」と指摘した。さらに、欧州連合(EU)と欧州の主要国も、この構想を支持する見通しだとされている。
しかし、イランと数十年にわたり軍事的な対立を繰り返してきたイスラエルが、この不可侵条約構想を受け入れるかどうかは不透明だ。アラブ外交筋は、「現時点でイランとイスラエルの双方を同時に参加させるのは難しい」との見方を示した。その上で、「イスラエルが参加しなければ、かえって逆効果となる可能性がある。多くの国は、イスラエルをイランに次ぐ地域の不安定要因とみている」と指摘した。
近年米国やイスラエルとの関係を深めているUAEの対応も焦点となっている。フィナンシャル・タイムズは、ペルシャ湾地域の二大有力国であるサウジとUAEが、中東秩序のあり方をめぐって異なる構想を持っていると報じた。また、外交当局者の間では、UAEがこの構想に参加するかどうかについて懐疑的な見方が出ていると伝えた。

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